偏ってる映画日記

主に映画、ごく稀に本についての感想を自由に書いています。

映画『人生万歳!』

2009年アメリカ映画。

ウディ・アレンの監督40作目のコメディ映画。

 

 

 私はウディ・アレンの映画が大好きで、数作観てきたが、この作品が今の所最も良か

ったので、それについて書こうと思う。

 全く期待せずいつもの感じと思って観てみたら予想外に素晴らしい映画だった。

 

 そもそもアレンの映画はどれを観てもめちゃくちゃな内容。なかみが無いようなテン

ポ重視のストーリーに思われる。

 しかしながら、アレン自身のコメントによると、彼は社会問題等よりも、心理学や哲

学に興味があり、それを盛り込んだ映画製作をしているようだ。ただ面白けりゃなんで

もいいやに見えていたのは私の読みがまだまだ甘いからのようです。

 

 この映画のストーリーだが、主人公は天才物理学者のボリス(ラリー・デイビッド)

という初老(?)の男を中心に描かれる。ボリスは非常に厭世的で、皮肉屋で、変わり

者で、あまりに天才であるがゆえに周囲の人間は皆バカだと思っており、なるべく関わ

らずに生きようとしている。また、潜在的に自殺願望もある。現に過去自分の部屋から

飛び降りて自殺を図って片足不随になっている。

 そんなある日、家出してきた若い女の子メロディと一緒に暮らすことになり、一般水

準よりおばか(?)と思われる彼女に辟易していた。しかし、おばか過ぎが故に素直で

純粋なメロディはボリスに恋をし、皮肉や暴言に怒ることなく、むしろ自分のものにし

ようとしていく。そして、ボリスもメロディを愛するようになり、結婚する。

 

 結婚して1年ほど経ったある日、メロディを探し当てた母親マリエッタがやってく

る。そして、ボリスが娘の夫だと知り卒倒するが、実は夫が彼女の親友と浮気し家を出

ていってしまい、住む家もなくなった為、あれやこれや文句を言いながらもボリスの家

に居候することになる。そうこうしているうちに彼女はボリスの大学教授である友人と

恋に落ち、彼に写真家、芸術家としての才能を見出され、内面外面共に変容していく。

厳格なキリスト教徒であるマリエッタは、夫や周囲から良き妻として振舞うことのみを

求められ、写真、芸術への興味は抑え込んでいたのである。そして、なんと彼女は大学

教授の恋人以外にも好きな人ができたので、結局3人で暮らし始める。

 

 そしてまた1年が過ぎた頃、今度はメロディの夫がボリス家に訪ねてくる。メロディ

を探し当てたというのは名目で、実は浮気相手とうまくいかなくなり、マリエッタとよ

りを戻したいと懇願しにきたのである。

 しかし、マリエッタはすっかり別人のようになっており、恋人二人と幸せな生活を送

っているので、よりを戻す気などさらさらなく、断られてしまう。

 彼は失意の中、近所のバーで独り飲んでいると、同じく、恋人に振られ、独りで飲ん

でいた男と意気投合し語り合い始める。すると、その男はゲイで、元恋人も男だったと

のこと。最初は違う世界の人だと思い距離を持って会話していたが、ふと、実は自分も

学生時代ラグビー部で一緒だったチームメイトにときめいていたことを思い出し、本当

は、女性に興味はなく、マリエッタにも最初からずっと性的興味は湧かなかったが、男

は妻と子を持って一人前といった価値観に縛られ、それに従って生きてしまったことを

告白する。

 そしてこの二人の男は恋人同士になる。

 

 そんな折、それなりにうまくいっていたボリス夫婦だったが、母親の仕向けた若くて

かっこいい俳優志望の男とメロディが恋に落ちてしまい、結局別れることになる。

 

 そして、メロディがいたからこそなんとか生きる気力を保っていたボリスだったが、

しばらくして、ふとした瞬間にボリスは再び窓から飛び降り、自殺を図る。

 

 今度こそ死んだかと思われたボリスだが、たまたま窓の下を犬と散歩中だった占い師

の女性の上に落ち、無傷だった。占い師の女性は重症で、入院する羽目になる。

 そして、ボリスは、お見舞いに行くうちに口達者な彼女に恋をし、また彼女もボリス

に恋をする。

 

 ラストは、4組の多様なカップルが集いパーティを開き、年末のカウントダウンを祝

うシーンで終わる。それぞれ多様ではあるがそれぞれの幸福の形を喜びながら。

 

 

 全編通して笑える、ありえないことだらけの単純なコメディ映画なのだが、メッセー

ジ性が強いと思われる。

 

「他人の目を気にせず、本当の自分を生きろ」

 

 そんな風に言われている気がする。

 年齢差・知能差の愛、ポリアモリーの愛、LGBTの愛、同年代の男女の愛、偶然出会

った人との恋・・・・全てを肯定するストーリー。誰かを傷つけたり犯罪を犯すのでな

いなら自分の本性に従って生きることが、本当の幸せに繋がる。そんなメッセージを感

じた。

 

 最後にボリスが視聴者に向かって語りかける場面がある。

 

「あなたが得る愛、与える愛

あらゆる幸せは、すべてつかの間だ。

だからこそ、うまくいくなら“何でもあり”だ。」

 

 永遠なものなんて何一つない。始まりがあるなら必ず終わりが来る。それならば形に

こだわらずに楽しみ、堪能したらいい、といったところだろうか。

 

 人はどうしても、生まれて生きていく中で多くの偏見、価値観を身につけていく。そ

して、その自分の価値観が自分を苦しめ、窮屈にしていたとしてもそれに気づかず生き

る。人生のどこかの場面で、ふと立ち止まって、「果たして自分のこの価値観は真実だ

ろうか」と考えてみることはとても重要だ。

 男は家庭を持ち立派に生きなければならない、女は子供を産み母親として家庭を守る

ことに専念しなければならない、男は女を愛さなければならない、必ず一人だけを愛さ

なければならない・・・・・一見日本人なら当たり前で正論に聞こえるものも、本当は

何ひとつ真実ではない。昔の誰かが作った価値観の残骸が自分の価値観だと思い込んで

いるだけかもしれないのだ。もちろん、その価値観であってもいいし、そうじゃない真

逆の価値観だっていい。自分が幸福であればどっちでもいいことなのだ。

 

 さすが、ウディ・アレンはプラベートでも充分この映画の主張を貫いた生き方をして

いるし、80年近く生きてきた彼だからこその結論だろうとも思う。

 

 またひとつ良い映画に出会えた。

 

 

 

 

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