偏ってる映画日記

主に映画、ごく稀に本についての感想を自由に書いています。

映画『百円の恋』

2014年12月20日公開の日本映画。

監督は武正晴、主演安藤サクラ、R−15指定。

 

 何かで紹介されていたのを見てから気になっていた映画。邦画は滅多に観ないのだ

 

が、なぜかこの映画は観る前から期待できる予感があった。

 

そして、結果当たりだったと思う。

 

 正直、キャストはなんとなく新井浩文を知ってたくらいで、主演の安藤サクラもそ

 

れ以外もさっぱり初めて見るメンツ。どの人も、なんというか、華やかさは無く、地

 

道に演技を磨いてきた実力派俳優達のように見える。

 

 ちなみに安藤サクラの最初の印象はサブカル系に好まれる顔そのものだと思った。

 

一般的には美人とも取れるし、そうでもない普通の顔とも取れる不思議な容姿。整っ

 

ているのか整っていないのか・・・印象薄いようで印象に残る容姿。

 

【あらすじ】

 生まれてから32年間実家暮らし、無職、毎日TVゲームと少年漫画で暮らし、髪は

パーマかけているが伸び放題、茶髪がかなりのプリン状態(一瞬流行りのグラデーシ

ョンにしてるのか?とも見えかねないくらい)、動かないので体はむっちり腰のお肉

ははみ出している。コンビニに出かける時はパジャマ姿のまま、下着も透けて見える

ことなんて気にしない。そんな女性、一子(安藤サクラ)が、姉妹喧嘩をきっかけ

に、勢いで家を出て一人暮らしを始め、深夜のコンビニで働きだしてから、初めて大

きく人生が動いていく話である。

 職場までの途中にあるボクシングジムで練習中の狩野(新井浩文)に恋をし、ちょ

っとしたきっかけから、狩野と暮らし始める。狩野の試合を観て感動した一子もボク

シングを始めていたが、突然狩野が家を出てそのまま帰ってこなくなる。

 他の女に走った上に、手酷い対応をされたことで一子に火がつき、全力でボクシン

グに打ち込み出す。

 そして、念願の試合に出場が決定した頃には、一子はまるで別人のように変化して

いた。お肉でだらしなかった体は引き締まり、髪もショートに切り、人生への自信と

やる気に満ちた表情、発言。口下手なのはそのままだけど、吹っ切れた感じが清々し

い。

 最後には、女にフラれた狩野が戻ってきて、やり直したかどうかはわからないが、

前途は悪くなさそうな感じで終わる。

 

 観ていて気持ちの良い映画かというと微妙ではあるが、とてもよくできた映画だと

 

思う。一子の怠惰な生活ぶりや、その周辺の人々の様子を見ていると、なんだか心が

 

ざわざわしてくる。日本のドラマによくありがちな、都会の快適なマンションに住

 

み、綺麗なオフィスで働くドジでおっちょこちょいな女の子が、失敗しながらも幸せ

 

を勝ち取っていくような、30前後のOLの理想のような、よく考えるとそんな人達

 

って丸の内とかで働く一握りの人達じゃない?というような、安全牌の描写ではない

 

のである。下町の現実によくありがちな普通以下の生活水準の人々をリアルに描いて

 

いるのである。一子には全く憧れるような部分は無く、むしろ、一子は私自身だ、と

 

鏡を見せられているような気分になるのだ。

 

 一子は32年間まともに家族以外と関わってきていないので、ポンと飛び込んだ一

 

般社会で、様々な洗礼を浴びることになる。どう考えても胡散臭い気持ち悪いおじさ

 

んにノコノコついて行って強姦されてしまったり、性格に難のあるはたから見たらい

 

わゆるクズ男の狩野に振り回されて捨てられたり。

 

 

 家を飛び出した時と、ボクシングの試合を終えた時と、一子の環境はほとんど変わ

 

っていない。男なし、仕事なし。下町で普通以下の生活のまま。

 

しかし、一子自身は全く別人に変化、成長した。一子の中の生への何かが変わった

 

 今まで逃げてきた現実世界と向き合い、体当たりして痛みを味わうことで、自分を

 

本当に幸せにしてくれるのは、男でも職場の仲間でも無い、自分自身だと、心から身

 

を持って気づいた。そんな風に感じた。

 

 ストーリーだけでなく、安藤サクラの演技が凄まじく、驚いた。この役はこの人に

 

しかできない、というくらいハマり役だった。対する新井浩文も非常に良い味を出し

 

ている。こういうちょっとキレた役柄をすると非常にカッコよく見える。

 

 久々邦画を観て改めて問題だと思うのは、売上につなげるには仕方ないのかもしれ

ないが、容姿だけで実力を完全に無視したドラマや映画が多すぎるということ。だか

ら私は邦画を滅多に観なくなったのだ。

例えば最近でいうと、松本清張の『黒川の手帳』の主役に武井咲を起用したこと。め

ったに観ないTVでたまたま観てかなり驚いた。容姿は良いのかもしれないが、あまり

に演技が良くない、雰囲気に合っていないキャストにしたばっかりに、素晴らしいス

トーリーが潰されてしまっていた。小説を読むのであれば、自分の頭の中で人物や光

景を想像して作り上げられるから気にもならないことが、映像と音声で表現し出す

と、一定のイメージで固定化されてしまい、それが作品にかなり影響を与えるのだか

ら、キャスティングは非常に重要だと思う(武井咲自体は好きでも嫌いでもないので

すが)。それなのに、俳優以外の面で人気があるとか、ただ売り出したい、とかの理

由で配役をしてしまうと、台無しになってしまい、脚本の実力が最大限発揮できな

い、ものによっては半減してしまっている。

 

 どうか、もっと作品作りをミーハーな観点抜きにして励んでもらうことはできない

だろうか、と思っています。

 

 

 

 

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